「尿に泡が立つのが気になる」と言って泌尿器科を受診する患者さんは多いです。
しかし、結論から言うと、少々の泡以外の症状がない場合は、異常や病気が見つかることはほとんどありません。
目次
尿の泡の原因。尿の泡が消えにくいのは、なぜ?
尿は腎臓で作られます。
腎臓の糸球体と呼ばれる器官で血液をろ過して、水分と一緒に老廃物を排泄します。
水に老廃物が混ざった液体、これが尿です。
この老廃物のうち、主にウロビリノーゲンという成分に尿を泡立たせる作用があります。
ウロビリノーゲン
ビリルビンとは、赤血球中のヘモグロビンが肝臓や脾臓などで壊されたときにできる胆汁色素のことです。ビリルビンは肝臓から胆汁に排泄されて、尿に出てくることはありません。しかし、肝障害や胆道の閉塞などで胆汁の流れが妨げられると、ビリルビンが血液中に増え、それが腎臓から尿に排泄されるようになります。
そのビリルビンが腸に排泄され、腸内細菌によって分解されたものがウロビリノーゲンです。ウロビリノーゲンの大半は便と一緒に排泄されますが、一部は腸管から吸収され、再び肝臓へと戻って血液中や腎臓をめぐり尿中に排泄されます。
(出典:病院の検査の基礎知識)
ところで、コーラやビールも泡が立つ液体ですが、コーラはすぐ泡が消えるのに対して、ビールの泡は消えるまで時間がかかります。
これは、ビールに麦芽由来のタンパク質やホップ由来の苦み成分、多糖類が界面活性作用を持っていて、ビールを注ぐ時に発生する炭酸ガス(二酸化炭素)を包み込んでコーティングするためだそうです。
(コーラには炭酸ガスをコーティングする成分が含まれていない。)
ビールほどではありませんが、ウロビリノーゲンもこのような界面活性作用を持っているので、一度立った泡が消えにくくなっています。
正常な尿の泡1
(出典:Kidney Failure)
正常な尿の泡2
(出典:尿泡沫正常的图_360图片)
なので、多少尿に泡が立っていても異常ではありません。
※この泡は、ちょっと微妙ですが、勢いよく排尿すれば、このくらいでも正常範囲です。
(出典:Health Momma)
ただ、尿の泡が異常に多い、ビールのようにクリーミーといった場合には、尿中にタンパクが混ざっている(タンパク尿)可能性や、前述のウロビリノーゲンの産生が多くなっている可能性があります。
異常な尿の泡1
(出典:Doctor Decides)
異常な尿の泡2
(出典:Kidney Service China)
尿の泡から考えられる病気は?糖尿病?膀胱炎?
タンパク尿の原因疾患として多いのは、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、慢性腎不全、妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)、膀胱炎などの病気、ウロビリノーゲンの産生が多くなるのは、肝臓や胆道の病気です。
しかし、このような疾患であれば、尿に泡が立つ前に、それぞれの疾患の症状(むくみ、高血圧、排尿痛、頻尿、血尿、黄疸など)が現れているはずです。
したがって、最初に述べたように、少々の泡以外の症状がない場合は異常ではないことが多いのです。