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子宮頸癌ワクチンは本当に危険なのか?

子宮頸癌ワクチン

集団訴訟にまで発展した子宮頸癌ワクチンによる副反応(副作用)問題ですが、この問題に関する研究内容に不正や捏造があったとして、研究員が所属する大学が調査をすることになったという報道がありました。

以下、時事通信社のニュースです。

信州大、研究めぐり調査へ=子宮頸がんワクチン副作用

信州大の池田修一教授(脳神経内科)が厚生労働省研究班の代表者として行った子宮頸(けい)がんワクチンの副作用についての研究内容に不正の疑いがあるとして、同大は28日、学内の規定に基づき、予備調査委員会を設置して調査することを決めた。今後、必要があれば外部の有識者を交えた本調査を実施する。

研究成果は今年3月、厚労省で発表された。自己免疫疾患を生じやすいマウスにさまざまなワクチンを打つと、子宮頸がんワクチンに対してだけ脳に異常な抗体が見られたなどの内容だったが、研究の手法などに外部から疑問が寄せられていた。

池田教授は取材に「マウスによる予備的な実験で可能性を提示しただけで、決定的な結論だと述べたつもりはない」と話している。

池田教授は現在、同大副学長と医学部長を務めているが、9月末で辞職する意向という。同大は、辞職は今回の調査とは無関係としている。

2016/06/28-10:35

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目次

子宮頸癌ワクチンとは?

子宮頸癌ワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン、HPVワクチン)は、アメリカでは2006年に、日本では2009年に承認された、子宮頸癌を予防するためのワクチンです。

日本で承認されたワクチンは、2009年の「サーバリックス」(グラクソ・スミスクライン社)、2011年の「ガーダシル」(MSD社)の二つです。

「サーバリックス」はHPV16型および18型の感染を予防、「ガーダシル」はHPV6型、11型、16型、18型の感染を予防し、結果子宮頸癌の発症を予防します。

接種年齢は9歳以上で、性行為初体験前の女子(主に10代)に接種することが推奨されていました。

副反応「続発」による接種推奨取消し

しかし、日本国内で相次いで報告された副反応により、2013年に厚生労働省が積極的な投与推奨を取り消すよう各医療機関に通達を出し、以降現在まで事実上の定期接種停止状態となっています。

一般の方々にも、「子宮頸癌ワクチンは危険」という認識が拡がっているのではないかと思います。

子宮頸癌ワクチンの副反応=子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)

子宮頸癌ワクチン接種による副反応には、痛みや疲労感、神経・精神症状、月経異常や自律神経障害、髄液異常などありとあらゆる症状が報告されています。

具体的には、失神、昏倒、発熱、嘔吐、頭痛、めまい、倦怠感、感覚麻痺、意識レベル低下、痙攣、筋力低下、全身の痛み、紅斑、歩行障害、手足のしびれ、成績の低下、漢字が書けない・読めない、計算ができない、光がまぶしい、視野狭窄、視力低下など、実にさまざまです。

これらの症状は、2014年に一般社団法人・日本線維筋痛症学会の西岡久寿樹理事長(東京医科大学医学総合研究所長、霞が関アーバンクリニック)により、「子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群」(HANS)と呼ばれるようになりました。

集団訴訟に発展

今年3月30日には、全国の「被害者」12人が、国とワクチン製造メーカーを相手に損害賠償を求める集団訴訟を起こす方針を発表する事態になっています。

日本特有の副反応?…WHOは安全宣言を発表

しかし、この一連の副反応は、なぜか日本国内のみに見られる症状で、日本以外の他国では見られることはなく、2013年にWHOが「HPVワクチンを原因として疑う根拠に乏しい。」と声明を発表しています。

さらに、「HPVワクチンは世界で1億7000万回超が販売されており、多くの国で接種されている。市販製品の安全性に懸念はないことを再確認した。」と総括しています。

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厚生労働省による副反応追跡調査

2015年に厚生労働省が発表した子宮頸癌ワクチンの副反応追跡調査の一部を以下に紹介します。

副反応追跡調査結果について

■子宮頸がん予防ワクチンを販売開始から平成26年11月まで接種した約338万人(約890万回接種)のうち、副反応疑い報告があったのは2,584人(被接種者約338万人の0.08%【のべ接種回数約890万人の0.03%】)

■発症日・転帰等が把握できた1,739人のうち、回復した方又は軽快し通院不要である方は1,550人(89.1%)、未回復の方は186人(10.7%、被接種者の0.005%、【のべ接種回数の約0.002%】)

■発症日・転帰等が把握できた1,739人のうち、発症から7日以内に回復した方は1,297人(74.6%)

■発症から7日を超えて症状が継続した方のうち、接種日から発症日の期間別の人数割合は、当日・翌日発症が47.7%、1月までの発症が80.1%

■未回復の186人の症状は、多い順に、頭痛66人、倦怠感58人、関節痛49人、接種部位以外の疼痛42人、筋肉痛35人、筋力低下34人

■未回復の186人は、1症状の方68人、2症状の方39人、3症状の方19人、4症状の方19人、5症状以上の方41人

■未回復の186人の生活状況は、入院した期間あり87人、日常生活に介助を要した期間あり63人、通学・通勤に支障を生じた期間あり135人

厚生労働省:副反応追跡調査について

副反応が現れたのは、ワクチン被接種者338万人(890万回接種)のうち0.08%(人)、0.03%(接種)で、そのうち未回復なのは0.005%(人)、0.002%(接種)という非常に低い数値であり、WHOが「子宮頸癌ワクチンは安全である」と言っている理由がわかります。

信州大学池田修一教授の研究内容について

最初のニュースについてですが、信州大学の池田修一教授の研究内容の不正問題については、以下のリンクに詳細が記されていますので、ちょっと難しいかもしれませんが、参照してみてください。

なお、このWEDGE Infinityには、この他にも子宮頸癌ワクチン問題に関する記事がたくさん掲載されていますので、特にワクチン接種年齢のお嬢さんやそのご家族に、ぜひご覧になっていただきたいと思います。

早期発見・早期治療よりも大事なのは、発症そのものを予防すること

これまで、信州大の池田教授の研究内容が「子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群」(HANS)の根拠とされてきましたが、今回の不正疑惑で、それが疑わしいものとなりました。

厚生労働省の調査結果を見ても、WHOの声明を見ても、子宮頸癌ワクチンは安全性が確立されていることは間違いありません。

検診による早期発見、早期治療も大事なことです。

しかし、子宮頸癌が早期に発見されたとしても、円錐切除で子宮を温存できるのは、ごく初期である0期だけで、早期癌であるI期(Ia, Ib)でも子宮全摘となります。

最近は20代、30代の生殖適齢期の患者が増えており、子宮温存が望まれます。

子宮を温存する究極の治療は、早期発見・早期治療ではなく、癌を発症しないこと=予防です。
癌発症を予防する治療がワクチンです。

子宮頸癌ワクチンは、HPV感染による子宮頸癌発症を予防するワクチンであり、若年者の子宮頸癌が多発している昨今、早期の定期接種再開が望ましいと考えます。

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