怪我や手術で傷を縫い合わせた時に、患者さんや家族からよく「何針縫いましたか?」と訊かれます。
時々テレビ等のニュースでも「この事故で、○○さんは左腕をxx針縫う大怪我をしました。」などと言っているのを聞いたことがあると思います。
「5針縫った」と聞くと小さな傷を想像し、「30針縫った」と聞くと、ものすごい大怪我(大手術)であったことを想像するでしょう。
目次
1針って何cm?
では傷を縫う時の1針って、具体的に何cm(mm)なんでしょう?
実は、それは決まっていません。
手術をする医師によってまちまちです。
そもそも、医師は何針縫ったかなど数えていないし、覚えてもいないので「何針縫った?」と訊かれても答えられないのです。
覚えているのは傷の長さ、深さくらいです。
大ざっぱな縫合、細かく丁寧な縫合
傷を縫い合わせることを「縫合」(ほうごう)と言います。
(画像は当ブログオリジナルです)
上の図では、横の線を傷の長さとし、縦の線を縫合した糸としています。
傷の長さを10cmと仮定して、上段は5mm間隔で19針、下段は1cm間隔で9針縫っています。
このように、同じ長さの傷でも、大ざっぱに縫えば少ない針数、細かく縫えば多い針数になります。
細かく縫合した方が仕上がりがきれいになり、治った時に目立たない傷になります。
なので、形成外科や美容外科では、細かく縫うことが多いです。
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縫合の仕方あれこれ
なお、縫合の仕方にはいろいろあります。
怪我や手術をする部位、傷の状態などによって縫合方法を決めます。
結節縫合
最も一般的な縫合です。
1針1針結び目を作って縫い合わせます。
糸が数本切れても傷は開きません。
(画像出典:SUTURING TECHNIQUES – MD Pulp)
連続縫合
1本の糸で端から端まで連続で縫い合わせます。
結び目は最初と最後だけです。
使う糸の量が少なくて済み、縫合時間も早いですが、糸のどこかが切れると、傷が全部開いてしまいます。
体内での縫合に用いることが多く、体表面(表皮)ではあまり用いません。
(画像出典:SUTURING TECHNIQUES – MD Pulp)
垂直マットレス縫合
緊張がかかる傷(引っ張りがあって開きやすい傷)や深い傷などで、表皮と皮下をしっかり合わせたい時に用います。
(画像出典:SUTURING TECHNIQUES – MD Pulp)
水平マットレス縫合
緊張がかかる傷で、あまり深くない場合などに用います。
(画像出典:SUTURING TECHNIQUES – MD Pulp)
皮下埋没縫合・真皮縫合
糸が体表面に出ない縫合で、抜糸不要です。
仕上がりがきれいなので、美容外科などでよく用いられます。
(画像出典:SUTURING TECHNIQUES – MD Pulp)
スキンステープラー(ステイプラー)
普通、縫合と言えば糸を使いますが、これはいわゆる「ホッチキス」みたいなもので、金属の針で皮膚を合わせて固定するものです。
(画像出典:Wikipedia)
糸で縫合するよりも、仕上がりがきれいになります。
(ただし、皮下または真皮縫合することが前提です)
緊張がかかる傷には使えません。
なお、ステープラーを外す時は、糸ではないので「抜糸」とは言わず、「抜鈎」と言います。
(画像出典:Mountainside Medical Equipment)
何cm縫いましたか?
今度からは、手術をした医師には「何針縫いましたか?」ではなく、「何cm縫いましたか?」と訊きましょう。