頻尿の原因はさまざまですが、ざっとあげると、
- 水分の過剰摂取(多飲)による多尿(尿量が多いこと)
- 利尿作用のある飲み物や食べ物の摂取による多尿
- 寒さや冷え
- 過活動膀胱(OAB)
- 残尿(排尿後に膀胱の中に尿が残ること)
- 膀胱炎・前立腺炎などの尿路感染症
- 尿路結石症
- 膀胱癌や膀胱周囲臓器の腫瘍
- 妊娠子宮による圧迫
- 心因性(精神的要因)
- 認知症
などがあります。
目次
多尿による頻尿
水(飲みもの)をたくさん飲むことで尿が多くなり、頻尿になる
日常の医療現場(外来診療)でよく耳にするのは、
- 血液をサラサラにするために、たくさん水を飲んでいる(テレビ番組などの影響)
- 循環器内科や脳神経外科の先生に「たくさん水を飲め」と言われた(心筋梗塞や脳梗塞などの既往があるため)
などという患者さんです。
上記とは逆に、自分では全く意識していなくても、知らず知らずのうちに大量に水分を摂取しているという人も結構たくさんいます。
水を大量に飲んだ直後は確かに血液が薄く(サラサラに)なりますが、ヒトの体は恒常性維持機能(ホメオスタシス)が常に働いているので、腎機能が正常であれば、体内の余分な水分は尿としてすぐに排出されます。
ホメオスタシス
体が生存し正しく機能するために必要とされる、体のシステム全体のバランスのとれた状態。この状態にあると、体内の酸、血圧、血糖、電解質、エネルギー、ホルモン、酸素、蛋白質、および体温の各値が、体内と体外の変化に反応して常に調整され、正常の値が保たれる。
(出典:がん情報サイト)
大量飲水と脳梗塞予防効果について
高齢者においては、脱水が脳梗塞の発症因子であることは報告されていますが、大量の飲水が、いわゆる「血液をサラサラにする」効果により、脳梗塞の予防になっているというエビデンスはなく、飲水後に血液粘稠度の変化は認められなかったと報告されています。
参考文献:Sugaya K, Nishijima S, Oda M, Miyazato M, Ogawa Y. Change of blood viscosity and urinary frequency by high water intake. Int J Urol 2007; 14: 470-472
水の飲み過ぎはかえって体によくないことがある
腎機能や心機能が悪い人は、水を排泄する機能が低下していますので、必要以上に水分を摂ると溢水(いっすい)状態(水分が過剰な状態)となり、浮腫(むくみ)、心不全、肺水腫(肺に水がたまった状態)などを引き起こす危険性があり、注意が必要です。
ですから、必要以上に水を飲む必要はありません。
1日に必要な水分は、脱水(=血液ドロドロ状態)にならないための量で、最低1日1リットルくらいです。(腎機能・心機能が正常の場合)
もちろん、暑い日、運動後などで汗が大量に出た場合などは、それ以上の水分補給が必要になります。
利尿作用のある飲みもの、食べもの、薬などによる多尿、頻尿
アルコール飲料、コーヒーや緑茶、紅茶などカフェインを含む飲料、カリウムを多く含む果物や生野菜を多く摂取すると、その利尿作用のため、腎臓で作られる尿量が多くなり、多尿による頻尿となります。
高血圧などで利尿剤を服用している場合も、多尿による頻尿となります。
病気による多飲多尿もある
単純な多飲多尿は病気ではありませんが、尿崩症(下垂体性と腎性があります)という病気では、腎臓での水の再吸収が障害されて尿が大量(1日3L以上)に作られ、血管内の水分が失われて脱水状態に陥るため、口渇が起こり、これを改善しようとして多飲となります。
糖尿病では、血糖値の上昇により血液の浸透圧が上昇しますが、これを元に戻す(浸透圧を下げる)ためには水で薄めることが必要なため、口渇を引き起こし、そのために多飲多尿となります。
寒さや冷えによる頻尿
気温が低い時は、発汗や不感蒸泄(発汗以外の皮膚および呼気からの水分喪失)が少なくなるため、尿として排泄する水分が多くなり、多尿となります。
また、寒さによって手足の末梢血管が収縮し、体幹(体の頭部・手足を除く胴体部分)を流れる血液量が増えるため、腎臓で作られる尿量が増えます。
さらに、寒さによる膀胱への直接刺激によって、膀胱が収縮し、頻尿となります。
外気温が低くなくても、冷え性の人には同様のことが起こります。
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過活動膀胱による頻尿
過活動膀胱(OAB = overactive bladder)とは、膀胱に尿が十分にたまっていないのに、膀胱が自分の意思と無関係に勝手に収縮するという状態を言います。
この病気では、突然尿意を催して我慢ができなくなり(尿意切迫感)、頻回にトイレに行くようになります。
この場合、一回の排尿量は少なくなります。
中には、トイレに間に合わず、途中で尿が漏れてしまうこともあります(切迫性尿失禁)。
過活動膀胱は、日本で800万人以上の男女が罹患していると言われるほど頻度の多い病気です。
原因としては、
脳梗塞、脳出血、パーキンソン病などの脳や脊髄の病気のために、膀胱の神経のコントロールが効かなくなること(神経因性膀胱)。
前立腺肥大症(男性のみ)による排尿障害のために膀胱が過敏になること。
などが挙げられますが、加齢による老化現象として起こったり、明らかな基礎疾患がなく、原因不明であることも少なくありません。
自分が過活動膀胱なのかどうかは、過活動膀胱症状スコア(OABSS)を付けてみると分かります。
「質問3」の点数が2点以上(太枠内)かつ合計3点以上で、過活動膀胱と診断されます。
残尿による頻尿
残尿とは、排尿後も膀胱内に尿が残る状態のことです。
(男性で尿道内に尿が残る現象があり、排尿後尿滴下の原因となりますが、これはここで言う残尿とは区別します。)
男性で前立腺肥大症による排尿障害が進行すると、残尿が発生します。
また、糖尿病、腰部椎間板ヘルニア、脊髄損傷、子宮癌・直腸癌の手術などで、膀胱を司る神経が障害されると、膀胱がうまく収縮できなくなって排尿障害を引き起こし、残尿が発生します(神経因性膀胱)。
膀胱内に残尿があると、見かけ上の膀胱容量が小さくなるので、1回の排尿量は少なく、何回もトイレに行くようになります。
尿路感染症による頻尿
膀胱炎や前立腺炎などの尿路感染が起こると、膀胱の知覚神経が刺激されて頻尿になります。
通常の尿路感染症は細菌感染が原因ですが、間質性膀胱炎は原因不明で、膀胱に慢性の炎症を起こす病気です。
長期間続く頻尿、膀胱充満時の下腹痛が特徴的で、治療法が確立されておらず、特定疾患(いわゆる難病)指定となっています。
尿路結石症、腫瘍による頻尿
尿路結石症、特に尿管結石の特徴的な症状は疝痛発作(突然発症する腹部の激痛)と肉眼的血尿ですが、ときにこの両方の症状が全く見られない場合があります。
この場合、尿管結石が膀胱近くにある時は、結石で膀胱が刺激されて、頻尿や残尿感など、膀胱炎と似たような症状が現れることが多いです。
膀胱結石でも頻尿が見られますが、通常排尿障害と尿路感染症を伴います。
また、腎結石や尿管結石に比べると、まれな疾患です。
膀胱癌の特徴的な症状は無症候性血尿(痛みを伴わない単純な血尿)ですが、進行した膀胱癌では、膀胱刺激症状としての頻尿がみられる場合があります。
また、膀胱の周囲にある臓器の腫瘍(子宮筋腫、子宮癌、直腸癌など)、妊娠子宮による膀胱の圧迫などで膀胱が刺激されて、頻尿になる場合があります。
心因性頻尿(精神的要因による頻尿)
心因性頻尿は、膀胱・尿道など尿路の病気がなく、また尿量が正常であるにも関わらず、トイレのことが気になって何回もトイレに行ってしまう状態のことを言います。
精神的要因によるものなので、集中できる何かに没頭している時などは、尿のことを考えないので、その間は何時間でもトイレに行きません。
また、夜寝てしまえばトイレのことを気にすることはなくなるので、通常は夜間頻尿はありません。
認知症における頻尿
認知症患者では、過活動膀胱や神経因性膀胱を伴っていることもありますが、そういった疾患がなくても、トイレのことが気になって仕方ないことや、直前に排尿したことを忘れていることなどで、何回もトイレに行く場合があります。