『膀胱癌』と聞いて思い出されるのは、元プロボクサーでタレントの竹原慎二さんが2014年に膀胱癌と報道されたのが記憶に新しいかと思います。
古くは、1989年に膀胱癌のため40歳で亡くなった俳優の松田優作さんが有名ですね。
そして、最近では「とくダネ!」のキャスターとして活躍するタレントの小倉智昭さんが、膀胱癌の手術のため、近く休養に入ることが報道されました。
他の癌に比べれば、膀胱癌の死亡率は決して高いものではありません。
膀胱癌になる原因や『膀胱癌かもしれない』と気付くことのできる正しい症状の知識をもつことで、膀胱癌に罹患する確率を抑え、また、早期の発見にもつながります。
目次
膀胱癌とは、膀胱にできる癌(悪性腫瘍)のことです
膀胱粘膜は尿路上皮細胞という組織でできており、ここから発生する癌なので、組織学的には尿路上皮癌といいます。
(以前は移行上皮癌と呼んでいました。)
尿路上皮癌以外にも、組織学的に扁平上皮癌、腺癌などがありますが、発生率は10%以下です。
膀胱には良性腫瘍が発生することがありますが、まれなので、膀胱腫瘍≒膀胱癌と考えてよいです。
膀胱癌の疫学・統計と死亡率
2013年の全ての癌の粗死亡率(人口10万人あたり)は、男性354.6、女性229.2で、このうち膀胱癌の粗死亡率は、男性8.6、女性3.7となっています。
(※粗死亡率:年齢調整をしないで1年間の死亡数を、その年の人口で割った値)
男性の方が女性の約2.3倍多く死亡しています。
ちなみに、癌の死亡率ワースト3(2013年)は、
男性 ①肺癌85.1、②胃癌52.3、③大腸癌42.2
女性 ①大腸癌33.9、②肺癌32.1、③胃癌25.8
なので、膀胱癌は、男性では1位の肺癌の約10分の1、女性では1位の大腸癌の約9分の1の死亡率です。
部位別癌死亡率(全年齢・2013年)
罹患率(2011年)で見ると、全ての癌の粗罹患率は、男性798.1、女性541.4(人口10万人あたり)で、膀胱癌の粗罹患率は、男性24.7、女性7.6となっており、男性の方が女性の約3.3倍かかりやすい癌となっています。
部位別癌罹患率(全年齢・2011年)
主に50代以降に発症し、年齢が高くなるほど発症率が高くなります。
ただ、40代よりも若年に発症することもあり、まれに20代で発症することもあります。
10代以下の発症はまずありません。
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膀胱癌になる原因は?
喫煙(タバコ)は膀胱癌の最も重要な危険因子です。
男性の50%以上、女性の約30%の膀胱癌は、喫煙のために発生するとの試算があります。
また、ある種の染料や化学物質、薬物に発癌作用があるとされています。
膀胱癌の症状
最も多い症状は、血尿(肉眼的血尿)です。
通常、痛みなどを伴わない「無症候性血尿」であることが多いですが、上皮内癌や進行癌(浸潤癌)である時や、発生部位によっては、頻尿、残尿感、排尿時痛などの膀胱刺激症状を伴う場合があります。
この膀胱刺激症状は、急性膀胱炎の症状と非常によく似ているので、要注意です。
血尿の現れ方は、トマトジュース様のほとんど血液みたいな濃いものから、うっすらピンク色までさまざまです。
(出典:社会医療法人 誠光会 草津総合病院 オフィシャルブログ)
ときに血液の塊が出ることもあります。
ひどい時は、この血液の塊が大量にできて、膀胱の出口を塞いで、尿が全く出なくなってしまうこともあります(膀胱タンポナーデ)。
血尿は何日も持続することが多いですが、断続的だったり、中には1回あるいは数回で止まってしまうことがあります。
血尿が止まったからと言って安心して長く放置していると、癌が進行する恐れがあります。
癌が進行すると、尿管口(腎臓から尿管を通って尿が膀胱に出る出口)がふさがれ、水腎症という腎臓が腫れた状態になり、腰背部痛を生じたり、尿が出なくなって腎不全になることも時折見られます。
膀胱癌の原因、症状、死亡率のまとめ
繰り返しになりますが、膀胱癌の最大の原因は、なんと言っても喫煙です。
喫煙は膀胱癌のみならず、肺癌や、その他多くの病気を引き起こしたり、体調不良を起こす原因にもなります。
健康の阻害になるものはできるだけ改善していけるといいですね。
そして、膀胱癌の発症率は圧倒的に50代以降で、年齢が上がるにつれて高くなります。
年齢的なものは、防ぎようがありません。なので膀胱癌の最も多い症状である『血尿』が出た場合は、早期に泌尿器科の病院へ受診をすることが大切です。
膀胱癌は部位別の他の癌に比べると死亡率は高いほうではありません。
膀胱癌の原因と症状を知って、早期に病院を受診して、適切な治療を受けることが治療回復への最大の近道となります。
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