女優の藤原紀香さんが水素水にはまっているということで、5月20日にニュースになっていました。
この前後の経緯がよくわからないのですが、ネット上では水素水に関する「祭り」になったんでしょうか、5日後の5月25日に、整水器やカートリッジの開発・販売を手がける「日本トリム」が、以下のようなプレスリリースを発表しました。
平成28年5月25日 日本トリム プレスリリース
インターネット上等での水素水に関する情報について
昨今、インターネット上等で、水素水に関する不確実な情報が流れておりますが、これらによる当社事業及び業績への影響はございません。
なお、誹謗・中傷や、風説の流布等の事実でないものにつきましては、法律に則り厳正に対処いたします。以上
ただならぬ雰囲気です。
「ネット上」というのは、おそらく「2ちゃんねる」のことだと思いますが、「誹謗・中傷や、風説の流布等」があったものと思われます。
目次
水素水に関する報道、公的機関の見解
平成28年5月30日 東京新聞
さらに、その5日後の5月30日には、東京新聞に以下のような記事が掲載されていました。
今朝の東京新聞で水素水を特集。メーカ一も「ただの水」w pic.twitter.com/dVuIfoGnUI
— 早見雄二郎(株式評論家) (@hayamiy) May 30, 2016
画像だと読みづらいので、本文の全文を以下に転載します。
市民向けのサイエンスカフェなどで水素水ブームに警鐘を鳴らす左巻健男・法政大教授(理科教育)によると、動物実験でこの効果を確かめた日本の大学教授の論文が〇七年に発表され、ブームのきっかけとなった。「世界的に権威のある医学誌への掲載で、はくがついた」(左巻教授)
水素水に含まれる分子状水素には「抗酸化作用」があるとされる。老化や生活習慣病の元凶となる活性酸素を抑えるものだ。「悪玉活性酸素」のヒドロキシルラジカルをつぶす効果が注目されている。
しかし、市場に出回っている水素水は、医薬品や、国が定めた安全性や有効性の基準などを満たしたトクホなど「健康機能食品制度」のらち外である。国の制度では、健康効果は実証されていないわけだ。
国民生活センターには、アルミ缶に入った水素水の統計は今のところないが、水道水などを電気分解して水素水をつくる「生成器」についてはデータをまとめている。
「血圧が下がった人のデータを見せられ、生成器を購入したが二カ月たっても変わらない」(六十代女性)「脳梗塞を患ったことがある。体に悪い活性酸素が除去できるなら良いが効果はあるか」(七十代男性)
全国の消費者相談窓口に寄せられた件数は、十五年末までの五年余りで二百二十件。相談者の購入額は十万~二十万円未満が28%と最多だった。同センターは「活性酸素は抑えられても、人体に対する飲用効果は示されていない。関連づけて考えないでほしい」と注意を喚起する。
左巻教授は「活性酸素は悪さをするばかりではなく、体外から侵入する細菌やウイルスを防御する良い役割もある。そもそも水素は大腸でも発生し、おならの10~20%を占め、外に出ないで体内にも吸収される。これは水素水から摂取する量よりはるかに多い。人間に効果があるかどうかは、大規模な調査を待った方が良い」と指摘する。
各企業は批判にどう答えるか。
伊藤園の広報担当者は「言葉の切り取り次第で商品の意図がゆがんでしまう恐れがあるので、コメントは避けたい。自社のHPで説明している」とした。HPでは「医薬品ではないため、健康効果を標ぼうするものではありません」「水分補給の1つの選択肢として販売しております」などと健康効果に触れていない。「活性酸素」という言葉も出てこない。中京医薬品の営業担当者も「医薬品ではない」と認めた。うたい文句の「カラダの中からキレイに」は、水素水がカラダの中からキレイにしてくれるとの意味に受け取れるのではないかと聞くと、「そういう趣旨ではない」。水素水が通常の水より優れている点はあるかとの問いには「特には…。一般の水と変わらない」と回答した。
天羽優子・山形大准教授(科学物理)は、伊藤園などの水素水について「慎重な宣伝文句にとどまっている。医薬品でもないし、健康への積極的な効果をうたえない程度の水だということ。治療効果など、水素の抗酸化作用については研究途上で、商品化は勇み足」と断じた上で、消費者の自覚を促す。
「水は原価も安いし、無害だから事故も起こさない。それをいいことに、企業側もお金をもうけようと、これまで名前を変えて、似たような水を出してきた。病気が治る魔法の水なんてない。消費者が水への過剰な期待を捨てない限り、今後も同じような水は出回り続ける」
左巻教授は、水素水ブームの背景に「水道水がまずい、健康に悪いという誤解がある」とみる。「以前はまずかった大都会でも、行政が高度な浄化処理をした水道水のペットボトルを売り出している。こうした水道水はミネラルウオーターよりも厳しい基準をクリアしており、安全でおいしい水だ。夏に向けた水分補給なら高価な水を買わなくても、水道水を飲めばいい」
平成28年6月10日 国立健康・栄養研究所
またさらに、その11日後の6月10日には、国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報のページに、水素水の項目が追加されました。
(前略)
俗に、「活性酸素を除去する」「がんを予防する」「ダイエット効果がある」などと言われているが、ヒトでの有効性について信頼できる十分なデータが見当たらない。
(後略)
平成28年3月10日 国民生活センター
また、これらに先立ち、3月10日に独立行政法人国民生活センターから「活性酸素の一種
を抑制する水をつくるとうたった装置-飲用による効果を表したものではありません-」という報道資料が発表されています。
前述の東京新聞の記事の元ネタです。
ここでは、水素水生成器2機種が実名で示されています。
(ここでは明記しないので、上のリンクを参照してください。)
(前略)
消費者へのアドバイス
テスト対象銘柄の広告に記載されている「ヒドロキシラジカル抑制率」は、飲用による効果を表したものではありません。人体への効果と関連付けて考えないようにしましょう。(後略)
解説
現在の医療は、EBM(evidence-based medicine)(根拠に基づく医療)が中心ですから、根拠(有効性、安全性などの医学的データ等)がないものは医療として認められない傾向にあります。
水素水もこの「根拠」に乏しいため、健康に対する有効性は認められないということのようです。
ただ、上の東京新聞の元ネタになった国民生活センターの調査に出てくる水素水生成器2機種は、リンクを見てみるとわかりますが、いかにもインチキ臭い商品です。
市場には信頼できそうな水素生成器がありますし、水素濃度が高いアルミパウチ充填製品もありますから、そちらの方で検証してほしかったところです。
当記事は水素水をディスるものではありません
ここまで読むと、水素水をディスる記事に思われるかもしれませんが、そうではありません。
続きがありますので、もう少しお付き合いください。
水素水の研究~医療・健康分野の学術文献紹介~
水素水に関する研究論文をまとめたサイトです。
動物実験レベルの論文が多い中、透析に関する論文は全てヒトに対する臨床試験で、それぞれに効果が得られたとあります。
ただし、飲用ではなく、透析液に水素水を使用したということで、一般の人の使用法と違うところに注意してください。
また、過活動膀胱に対する臨床試験(こちらは飲用です)も行われており、統計学的有意差は見られなかったが、膀胱痛に対しては極めて効果があったとあります。
他にも、ヒトに対する臨床試験を行った論文が多数存在します。
「水素水はヒトの健康に対する効果が全くない」とは言えないのではないかと考えます。
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実際に水素水を飲んでみた
実は当ブログ監修者は、以前病気になった時、一定期間水素水を飲んでいたことがあります。
(⇒プロフィール参照)
水素水を飲むに当たって、当時参考にした本はこちらです。
水素水の効果
この時は、病気が治ったとか、みるみる元気なったとか、目に見えるはっきりとした健康改善効果は感じませんでした。
しかし、ただ一つ確かなのは、水素水を飲むと利尿がついて、ものすごく尿量が増えたことです。
医師らしくない言い方ですが、「何か悪いものが出て行く」感じがしました。
単に飲水量が増えただけ?
水素水の利尿効果については「今まで水を飲む習慣がなかったところに、水素水を飲む習慣がプラスされたことで、単に飲水量が増えたからだ」という意見もあります。
これに対しては反論があります。
アルミパウチ充填製品と水素スティックでつくる水素水の違い
私が最初に飲んでいた水素水は、アルミパウチに充填されたものでした。(後述)
しかし、毎日数本飲んでいると、かなりコストがかさむので、途中からペットボトルで水素水を作る「水素スティック」に切り換えました。
ところが、この方法で作った水素水を飲んでも、利尿効果は全くなかったのです。
したがって、「単に飲水量が増えたから尿量が増えただけ」ということではありませんでした。(なお、水素スティックの詳細については、ここでは触れません。)
後になって知ったことですが、ペットボトルで水素水を作成しても、すぐに水素が抜けてしまうそうです。
なので、私が水素スティックで作って飲んでいた水素水は、水素含有量が少なかった可能性があります。
逆に、アルミパウチに充填されたものは、未開封では水素が抜けないそうです。
そのかわり、開封した途端どんどん水素が抜け出すので、速やかに飲み干す必要があります。
私が飲んでいた水素水(アルミパウチ充填製品)
経験上、私は水素水は何らかの健康的効果をもたらすのではないかと考えています。
水素水生成器について
水素水生成器で作った水素水は、作られた直後は水素濃度が高いですが、すぐに水素が抜けて行くので、生成後は速やかに飲む必要があります。
ただし、水素水生成器は性能がピンキリのようで、声明を発表した日本トリムは厚生労働省から医療機器の認証番号を取得している「本物」ですが、国民生活センターから指摘を受けた2社は、そうではない「ニセモノ」だったのでしょう。
「インチキ製品」もたくさんあるようなので、水素水生成器を購入する際は注意が必要です。
日本トリム
日本トリムの製品は、前述のように厚生労働省から医療機器の認証番号を取得しているので、信頼できるのではないかと思います。
パナソニック
大手家電メーカーのパナソニックからも水素水生成器が発売されていますが、こちらは「還元水素水生成器」という名前で、「水素水はアルカリ性電解水と同じである」と表記されています。
厚生労働省の認証番号については記載されていません。
ミライプラス
他には「水素水専門」のミライプラスという会社から、数多くの製品が発売されているようですが、こちらも厚生労働省の認証番号については記載されていないようです。
水素ガス濃度28,000ppm! 高濃度水素水サーバー マリアージュ
ただ、この会社は、厚生労働省のプロジェクト「Smart Life Project 健康寿命をのばそう!」の企業メンバーとのことで、ある程度の信頼性はありそうです。