認知症の発症リスクにはいろいろな因子がありますが、生涯従事してきた職業が関連している可能性があるとした研究結果が、今年の6月21日に報告されました。
目次
スペインの研究グループによる報告
発表したのは、スペイン・サラゴサ大学公衆衛生学の研究グループ(Guillermo Marcos Aragüés教授)で、Revista espanola de salud pública(スペイン公衆衛生ジャーナル)誌での報告です。
サラゴサ大学(画像出典:ABC.es)
原著:OCUPACIÓN LABORAL Y RIESGO DE DETERIORO COGNITIVO Y DEMENCIA
EN PERSONAS MAYORES DE 55 AÑOS: UNA REVISIÓN SISTEMÁTICAGracia Rebled AC, Santabárbara Serrano J, López Antón RL, Tomás Aznar C, Marcos Aragüés G.
Rev Esp Salud Publica. 2016 Jun 21;90:e1-e15.
(英訳:Occupation and Risk of Cognitive Impairment and Dementia in People in over 55 Years: A Systematic Review, Spain)
(邦訳:55歳以上の人の職業と認知機能障害および認知症のリスクについての系統的レビュー、スペイン)
(スペイン語原文はこちら⇒http://www.msssi.gob.es/biblioPublic/publicaciones/recursos_propios/resp/revista_cdrom/VOL90/REVISIONES/RS90C_ACGR.pdf)
この論文の要約
1990年~2014年までの18文献の系統的レビューを行い、職業と認知症の関連を分析した。
そのうちの67%で、職業の種類と認知能力との関連が確認された。
主に肉体労働に従事している人は、知的要件の高い職業に従事している人よりも、認知機能障害や認知症のリスクが高いことが示唆された。
頭脳的な職業が認知症になりづらいのは当たり前?
逆に言うと、肉体を使う職業より頭脳的な職業の方が認知症になりづらいという結果ですが、これは当たり前と言えば当たり前のような気がします。
この文献は原文がスペイン語で、英語で読めるのは要約だけのため、全文が読めておらず、バックグラウンドがよくわからないのですが、肉体労働に従事していた人が、リタイヤ後に頭を使うような趣味などに没頭した場合や、逆に頭を使う職業に従事していた人が、リタイヤ後に全く頭を使わなくなったりした場合はどうなるんだろう?とか、専業主婦や障害や何らかの理由で仕事に従事できなかった人はどうなんだろう?とか、長い間刑務所に入っていた人はどうなんだろう?とか、いろいろ疑問なところがあります。
実際患者さんを見ていると、農業や漁業、建築業、自衛隊など主に肉体を使う職業(頭も使いますけどね)に従事していた人や専業主婦だった人が、80代90代になっても矍鑠(かくしゃく)としていたり、逆に医師や教師、学者など、頭を使う職業に従事していた人が、比較的若年のうちに認知症になっているのをよく見かけるからです。
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従事した職業だけが認知症のリスクではない
認知症の原因は、従事した職業だけではなく、退職した後の生活の内容も関係しているものと考えます。