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生存率が低い癌でも10年後の生存率が上がっている最新の癌生存率とは?

癌 生存率

よく耳にする癌の生存率とは、癌と診断されてから、ある一定年数生存している人の割合です。

これが、治療後数年経った患者を対象に、治療後数年経った時点でのその後の生存率を調べるとほとんどの癌において、大きく生存率が上がることがわかりました(サバイバー生存率)。

ということは、頑張って生きれば生きるほど、その後長く生きられる可能性が高くなるということです。

以下に詳しく見ていきたいと思います。

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目次

サバイバー生存率とは

聞き慣れない言葉だと思います。

これは、癌と診断されてから一定年数経過後に生存している患者(サバイバー)の、その後の生存率のことを指します。

例えば、癌と診断されてから1年生きた患者(1年サバイバー)の5年生存率は、診断から1年後に生存している患者に限って算出した、その後の5年生存率です(診断からは6年後)。

これが5年サバイバーなら、癌と診断されてから5年生きた後のさらに5年後の生存率ということになります(診断から10年後)。

サバイバー生存率は、2014年10月21日に、大阪府立成人病センターがん予防情報センターから発表されました。

がん患者の長期生存率および”がんサバイバー生存率”の最新データ発表。皮膚・甲状腺がんは診断から10年経過後、約9割が生存可能。患者会、臨床医の声を反映した情報提供

【2014年10月21日】 大阪府立成人病センターの伊藤ゆり研究員らのグループは、我が国を代表する大規模がん患者データベースである6府県の地域がん登録資料を用いて、最新のがん患者の10年生存率およびがんサバイバーのための生存率を発表しました。これまでがん患者の治療成績は5年生存率として報告されてきましたが、がん患者はより長期に生存が可能となり、がんサバイバーのための情報が求められています。これを受けて、最新の医療の状況を反映したがん患者の長期生存率が、23 種類のがんについて、性別・年齢階級別・進行度別に網羅的に報告されました(Cancer Science、2014年10月18日)。

(後略)

出典:研究成果の報告

上記の文献
Long-term survival and conditional survival of cancer patients in Japan using population-based cancer registry data. Ito Y, Miyashiro I, Ito H, Hosono S, Chihara D, Nakata-Yamada K, Nakayama M, Matsuzaka M, Hattori M, Sugiyama H, Oze I, Tanaka R, Nomura E, Nishino Y, Matsuda T, Ioka A, Tsukuma H, Nakayama T; the J-CANSIS Research Group. Cancer Science 2014; 105: 1480-6.

サバイバー生存率は、上記の文献に基づき、がん情報サービスにも掲載されています。

この中の「地域がん登録によるがん生存率データcancer_survival_period(2002-2006).xls」から「10年相対生存率およびサバイバー5年相対生存率(2002年~2006年追跡例)」を利用して、当ブログ独自のサバイバー生存率グラフを作成してみました。

選択した癌の部位は、2013年の癌死亡数ワースト5で、

男性
1位:肺
2位:胃
3位:大腸(結腸と直腸に分けています)
4位:肝臓
5位:膵臓

女性
1位:大腸(同上)
2位:肺
3位:胃
4位:膵臓
5位:乳房

に、これまで当ブログで紹介してきた膀胱癌(男性11位、女性13位)を加えたものです。

サバイバー5年生存率一覧/全病期(男女別)

全ての病期(ステージ)をひっくるめた生存率です。

早期癌ではこれよりも高め進行癌ではこれよりも低めになります。
それらについては、この次に紹介する限局、領域、遠隔それぞれのサバイバー5年生存率を参照してください。

サバイバー5年生存率/全病期(男性)

サバイバー全病期男

サバイバー5年生存率/全病期(女性)

サバイバー全病期女

解説

男性では、胃、結腸、直腸、膀胱、女性では、胃、結腸、直腸、乳房、膀胱が、診断時の5年生存率(一般的な5年生存率)が60%以上(予後良好群)ですが、男女の肺、膵臓、男性の肝臓は、診断時の5年生存率が30%以下、特に膵臓は10%以下と、非常に予後が悪くなっています(予後不良群)。

しかし、サバイバー生存率は、生き延びる期間が長くなるほど、生存率が高くなる傾向にあり、特に予後不良群で、その上昇率は顕著になっています。

特に膵臓癌では、男女とも診断時の5年生存率が5.9%なのに対し、5年サバイバー生存率は、男性で78.8%、女性で81.6%となり、予後良好群(90%以上)に迫る数値となっています。

肝臓癌に関しては、5年サバイバー生存率が診断時5年生存率とあまり変わらないため、予後不良であることが分かります。

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サバイバー5年生存率一覧/限局(男女別)

限局…原発部位付近にとどまっている癌(早期癌)のことです。

サバイバー5年生存率/限局(男性)

サバイバー限局男

サバイバー5年生存率/限局(女性)

サバイバー限局女

解説

男性の予後良好群(胃、結腸、直腸、膀胱)では、診断時5年生存率が既に90%以上で、5年サバイバー生存率は95%以上となっています。

予後不良群(肺、肝臓、膵臓)では、全病期のものに比べて診断時5年生存率が高めになっており、その後は全病期と同じような上昇曲線となっています。

女性の予後良好群(胃、結腸、直腸、、乳房、膀胱)も、男性とほぼ同じような経過で、5年サバイバー生存率は95%以上となっています。

予後不良群(肺、膵臓)のうち、膵臓は男性と同じような経過ですが、肺については、診断時5年生存率が86.8%、5年サバイバー生存率が91.0%と高くなっており、予後良好群と同じような経過となっています。

サバイバー5年生存率一覧/領域(男女別)

領域…所属リンパ節転移・隣接臓器に浸潤している癌(局所進行癌)のことです。

サバイバー5年生存率/領域(男性)

サバイバー領域男

サバイバー5年生存率/領域(女性)

サバイバー領域女

解説

局所的に進行している癌なので、診断時5年生存率は軒並み低くなっています。

しかし、肝臓を除く全ての癌で、5年サバイバー生存率は、男性で70%以上、女性で60%以上となっており、特に女性の予後不良群のうち膵臓は、診断時5年生存率が5.3%であるのに対し、5年サバイバー生存率は86.0%と非常に高くなっています。

サバイバー5年生存率一覧/遠隔(男女別)

遠隔…遠隔リンパ節や遠隔臓器に転移している癌(進行癌、転移癌)のことです。

サバイバー5年生存率/遠隔(男性)

サバイバー遠隔男

サバイバー5年生存率/遠隔(女性)

サバイバー遠隔女

解説

遠隔転移が見られる癌なので、診断時5年生存率は、女性の乳癌以外は全て15%以下と非常に低くなっており、予後不良であることが分かります。

しかし、5年サバイバー生存率は、肝臓を除く全ての癌で大きく上昇しており、男性で60%以上、女性で50%以上となっています。

まとめ

癌はもう不治の病ではなくなっています。

癌を克服して、その後長く生きている人もたくさんいます。診断時に医師から知らされた生存率に愕然とされる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、正しい治療を受け安静に療養し経過することで、診断時に医師から告げられた予後とは全く違うものになっているということは、このサバイバー生存率を知って、ご理解されたと思います。

医療の進歩は目覚ましいです。
癌患者様には、明日に希望をもって治療をうけ、心穏やかに療養できることを心から願います。

【補足】
サバイバー生存率を含む、癌の生存率に関する情報は、大阪府立成人病センターのがん予防情報センターのサイトに詳しく掲載されていますので、一度目を通してみてください。
がんの生存率情報 | 研修会と資料 | がん予防情報センター